アスファルトの防水工事とは?費用相場や種類を解説  

建物を保護する役割を担う防水工事にはいくつもの種類があります。


それぞれの防水工事には一長一短の特徴があるため、施工箇所や状況に応じて最適なものを選択しなければいけません。


そのためにも、それぞれの特徴を知ることが必要になります。


いくつもの種類がある防水工事の中の1つに、アスファルト防水工事と呼ばれるものがあります。


アスファルト防水工事を検討する場合、費用相場や施工の流れを知っていれば専門業者との打ち合わせがスムーズに進むでしょう。


そこで今回は、防水工事の中からアスファルト防水工事に絞り、施工内容や費用相場などについてご紹介いたします。



アスファルトの防水工事とは?

アスファルト防水とは、液体状に溶かしたアスファルトと、アスファルトを染み込ませた合成繊維不織布(ルーフィングシート)を重ねることで防水層を形成する防水工事のことです。


この防水工事は、ルーフィングシートを何層にも重ねて施工を行うことや、アスファルトそのものが石油製品であるなどの性質上、水密性が高いといった特徴があります。


さらに、耐用年数が15年以上であるため、耐久性にも優れている点も人気の理由の1つです。


日本においてアスファルト防水が最初に行われたのが1905年とされており、以降改良を重ねられながらも多くの現場で採用され続けてきた実績があります。


このように、防水工事の中でも最も歴史が長い手法であるアスファルト防水は、日本において多くのノウハウがあるため高い信頼性があるのです。


現在では、マンションやビルなどの大型建設物の屋上で採用されることが多い防水工事です。



アスファルトの防水工事の費用相場

アスファルト防水工事の費用相場は、1㎡あたりおおよそ6,000円から8,000円が費用相場とされています。


ただし、この費用相場は人件費や機材、施工箇所の状態によって変動する可能性があるため、あくまでも目安と考えておきましょう。


正確な金額を知りたい場合には、信頼できる防水工事業者に相談して見積依頼をしましょう。


施工の際には、見積依頼で正確な金額を把握してから施工を行うことが大切です。



アスファルトの防水工事の種類一覧

一口にアスファルト防水といっても、施工の進め方や必要な工程によりいくつかの種類に分類されます。


それぞれに特徴があるため、アスファルト防水を検討するのであれば、各工法を知っておくと施工のイメージが湧きやすいでしょう。


ここでは、アスファルト防水工事におけるそれぞれの工法を詳しくご紹介いたします。



熱工法


熱工法とは、熱を加えて溶融させたアスファルトを用いて、ルーフィングシートを何重にも重ねて貼り合わせることで防水層を形成する工法です。


アスファルトには、常温になると固体になる性質があります。


この性質を利用することにより、ルーフィングシート同士の密着性が高まるため、高い耐久性・防水性に期待できるのです。


そのため、高品質な防水工事を行えるというメリットがある工法です。


一方で、アスファルトを熱することで臭気が発生するため、施工の際には周辺環境へ配慮した施工が求められます。


また、施工の際には作業員の安全を守るためにも、安全対策を何重にも講じなければいけないといったデメリットがあります。



トーチ工法


ルーフィングシートをトーチバーナーで炙りながら貼り付けることで防水層を形成する工法のことを、トーチ工法と言います。


熱工法とは異なり、アスファルトを溶融させる際の臭気の発生が抑えられる点がメリットとして挙げられます。


また、アスファルトを溶かすための大型設備や装置を必要としない点も魅力的です。


ただし、局所的にバーナーを当ててシートを貼り付けていくため、高い技術力が要求される工法です。


そのため、施工する作業員が不慣れであると、接着不足により施工不良が起こるリスクがあるでしょう。



常温工法


熱工法やトーチ工法とは異なり、施工を進めるにあたって熱を全く使用しないのが常温工法の大きな特徴です。


片面に加工を施して接着性が付与されたルーフィングシートを交互に貼り付けていくことで、防水層を形成していきます。


この工法は、アスファルトを溶融させる設備や装置が不要なことや、トーチバーナーで炙る工程がないため作業のコスト・手間が最小限で済むといったメリットがあります。


シートを貼り付ける工程のみであるため、大掛かりな工程を組む必要がありません。


ただし、十分な防水機能を得るためには何重にもシートを重ねる必要があり、建物への負荷がかかる点がデメリットとして挙げられます。


そのため、施工の際には建物の耐久性を考慮しなければいけません。



アスファルトの防水工事の流れ

アスファルト防水を行う場合、最初に下地の清掃・下地処理・ドレンの設置が必ず行われます。


また、下地に接着剤の役割を担うプライマーを塗布することも欠かせない工程です。


ここから先は、工法によって施工の流れが大きく異なるため、工法ごとに見ていきましょう。


熱工法の場合、溶融したアスファルトを流しながらルーフィングシートの貼り付けを行っていきます。


この工程は1度だけではなく、ルーフィングシートが3層前後まで重なるように貼り続けていきます。


ある程度の層まで貼り重ねられたら、溶融したアスファルトを全体に塗り広げ、仕上げ処理を行って作業完了です。


熱工法の作業は、全体を通して8日から12日ほどで完了します。


トーチ工法の場合には、プライマーの塗布が完了した後に下地とシートの裏側をトーチバーナーで熱して、下地とシートを貼り合わせていきます。


その後、紫外線から防水層を守るためにトップコートを塗布して作業完了です。


トーチ工法の作業は、おおよそ8日から12日ほどで完了します。


一方で熱を使わない常温工法の場合には、貼り付けられるように改良されたアスファルトを下地にそのまま貼り付けていくことになります。


貼り付けが完了したら、トーチ工法と同様にトップコートを塗布して作業完了です。


常温工法は、おおよそ5日から7日で作業完了となります。


アスファルト防水は、現場の状況や工法によって工事日数・工事の流れが変わることがあります。


そのため、ここでご紹介した流れや工事日数はあくまでも目安として覚えておきましょう。



アスファルトの防水工事に対応する業者を選ぶ際のポイント

アスファルト防水を検討する場合、業者を選定する際にいくつかの注意点があります。


注意点を意識せずに依頼した場合、思わぬトラブルに発展する可能性があります。


ここでは、アスファルト防水工事における業者選びのポイントをご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。



評判や実績に問題がないか


防水工事は施工を行う業者によって、仕上がりに大きな差が生じることが多々あります。


極端なケースですが、施工に不慣れな業者が施工をした場合、施工後に不具合が生じて施工のやり直しを検討しなければいけないといったことも起こり得るのです。


そのため、防水工事を依頼するのであれば、業者の評判や実績に問題がないかどうかを確認することが欠かせません。


最近はインターネットにおいて防水工事業者の口コミが掲載されていることがあるため、それを確認することも1つの手です。


また、防水工事業者のホームページに施工実績が掲載されていることが多々あるため、それらも必ず確認しておきましょう。


評判や実績を確認し、その上で信頼できるかどうかを判断することが大切です。



見積書の内容を十分に説明してくれるか


防水工事業者の中には、専門用語が多く記載されている見積書を提出して契約を迫るところも少なからずあります。


しかし、防水工事の知識がなくどのような施工を行うのかを具体的にイメージできない方は、そのような見積書を見ても判断することが難しいでしょう。


場合によっては、必要な施工が含まれていない・不要な施工が含まれている・意図していない工程が混ざっている、などのケースも十分に考えられます。


そのため、業者を選定する際は見積書の内容を丁寧に説明してくれる業者に依頼することをおすすめします。


丁寧に対応してくれる業者であれば、不明点・疑問点を解消してくれるため、施工への理解が深まった状態で依頼できるはずです。


その結果、施工後にトラブルが発生する可能性も低く、理想的な施工を実現できるでしょう。



保証・アフターフォローがあるか


防水工事は施工を行ってそれで終わりという訳ではありません。


状況に応じてメンテナンスや状況の確認などを小まめに行っていくことが必要になるものなのです。


そのため、保証・アフターフォローの有無は必ず確認しておくべきポイントです。


保証・アフターフォローは業者ごとに内容が大きく異なります。


そのため、確認を怠っていると、万一トラブルが生じても対応してくれないといったことが起こり得るのです。


施工後も定期的なメンテナンスを行っているのか、施工不良があった場合には対応してくれるのかを事前に確認しておきましょう。



アスファルトの防水工事に関するFAQ3選

防水工事を検討されている方の中には、アスファルト防水工事に対してさまざまな疑問をお持ちの方が多くいらっしゃいます。


ここでは、疑問点を解決していただくために、アスファルト防水工事に関するよくあるお問い合わせをご紹介いたします。



アスファルトの防水の耐久年数はどれくらい?


アスファルト防水の耐用年数は、おおよそ15年から25年前後とされています。


ただし、施工後は5年に1度のトップコートの塗り替えやドレンの清掃などのメンテナンスが欠かせません。


適切なメンテナンスを行っていなければ劣化が早まるため、耐用年数が短くなる可能性がある点には注意が必要です。



アスファルトの防水工事の目安は?


耐用年数である15年を超えた時点で、アスファルト防水工事の施工を検討する必要があります。


ただし、耐用年数を迎えていなくても、雨風や紫外線、経年劣化によりアスファルト防水にさまざまな劣化サインが表れることがあります。


施工箇所に劣化サインが確認できた場合も、施工を行うタイミングです。


アスファルト防水における劣化サインの代表的なものとして挙げられるものは、防水層の膨れやひび割れ、接合部の剥がれや植物の生育などです。


これらの状態を放置していると、劣化箇所から雨水が浸入してトラブルを引き起こす可能性があります。


劣化サインは初期症状であれば簡単な手直しで済むことがあるため、施工の手間や費用を大きく抑えられるはずです。


ただし、劣化サインを放置することが原因で悪化した場合は、雨漏りや建物の耐久性の低下など大きなトラブルに発展しかねません。


そのため、目視で異常を発見した場合は、早急にプロの専門業者に相談しましょう。



アスファルトの防水工事は部分補修できるの?


アスファルト防水工事では、部分補修が可能です。


ただし、補修の必要な箇所が全体の1/4以上である場合や、症状が悪化して大規模な補修が必要な場合は部分補修では対応が難しいため、防水工事の再施工を検討しなければいけません。


部分補修として対応が可能な症状としては、防水層の膨れや軽度な破損などが挙げられます。


部分補修で対応できれば施工に必要な費用を抑えられるため、経済的な負担を軽減できるはずです。


そのため、アスファルト防水に異変があった場合は、些細なことでもすぐ専門業者に相談して状況を確認してもらうことをおすすめします。



まとめ


今回はアスファルト防水工事の特徴や施工の流れ、費用相場や依頼時の注意点などをご紹介いたしました。


アスファルト防水は他の防水工事と比較すると、高い防水性・耐久性が魅力的です。


ただし、施工に適した箇所・環境があるため、防水工事を検討する場合はアスファルト防水が最適であるかどうかの判断が大切になります。


このような判断は、専門的な知識や経験がないと非常に難しいため、まずは専門業者に相談してみましょう。


専門業者であれば、プロの立場から適切なアドバイスをしてくれるため、アスファルト防水を採用するべきかどうかを検討しやすいはずです。


今回ご紹介した内容はあくまでも参考であるため、具体的な金額や施工内容を知りたい場合は、信頼できる専門業者に相談して慎重に検討することをおすすめします。